【外傷】転倒転落
少し時間が空いてしまいましたが、頭部外傷の続きを書こうと思います。
今回は転倒転落にfocusを当てて。
頭部外傷の受傷機転で
- 交通事故
- 転倒
- 転落
- 物体が衝突(物体に衝突)
が多いですよー、ということは前回述べました。
交通事故を看護師として予防する、ということはなかなか難しいことです。しかし、
「転倒・転落」
これは予防や対応はできます。
転倒転落に対する看護はしっかり行われていますか?
転倒転落で死亡した事例について紹介します。
医療事故調査支援センター(https://www.medsafe.or.jp/modules/about/index.php?content_id=14)に届けられた、2015年から2018年の報告908件のうち、転倒転落に関する死亡事例は18例ありました。
そのうち18例は16例が頭部外傷、2例が窒息でした。
医療事故調査支援センターはその死亡例について振り返りを行っています。
- 年齢 70 歳代以上かどうか→11 例中 8 例
- 転倒・転落歴の有無→11 例中 6 例
- 認知機能低下・せん妄などの有無→11 例中 7 例
- 向精神薬内服の有無→11 例中 8 例
- 頻尿や夜間排泄行動の有無→ 11 例中 6 例
これをみて、これらのことは当たり前だよ!と思うかもしれません。
高齢者が転倒転落しやすい、せん妄発症が転倒転落を誘発・・・
そんなことは、転倒転落すると考えて当たり前なんです。
その「当たり前」を予防できず対応できず、亡くなっている人がいることは事実です。
とても残念で悲しいことです、患者も家族も、関わった看護師も。
さきほどの
当たり前=転倒転落リスク
と言い換えられますが、それらをスクリーニングするために、おそらく各施設で転倒転落リスクアセスメントのテンプレートがあると思います。
が、それだけで十分ですか?
それだけで予防や対応ができれば、人は転倒転落で亡くなりません。
前述した、医療事故調査支援センターの振り返りでは
- 転倒・転落による頭部打撲(疑いも含む)の場合は、受傷直前の意識状態と比べ、明らかな異常を認めなくても、頭部 CT 撮影を推奨する。急速に症状が悪化し、致命的な状態になる可能性があるため、意識レベルや麻痺、瞳孔所見などの神経学的所見を観察する。
- 頭部打撲が明らかでなくても抗凝固薬・抗血小板薬を内服している患者が転倒・転落した場合は、頭蓋内出血が生じている可能性があることを認識する。
- 初回 CT で頭蓋内に何らかの出血の所見が認められる場合には、急速に増大する危険性があるため、予め時間を決めて(数時間後に)再度、頭部 CT を撮影することも考慮する。頭部 CT 上、出血などの異常所見があれば、脳神経外科医師の管理下に迅速に手術ができる体制で診療を行う。常勤の脳神経外科医師がいない病院や時間帯では、迅速に対応できるよう脳神経外科手術が可能な病院へ転送できる体制を平時から構築しておく。
- ベッド柵を乗り越える危険性がある患者に対して、ベッドからの転落による頭部外傷を予防するため、衝撃吸収マット、低床ベッドの活用を検討する。また、転倒・転落リスクの高い患者に対しては、患者・家族同意のうえ、保護帽の使用を検討する。
- 転倒・転落歴は、転倒・転落リスクの中でも重要なリスク要因と認識する。また、認知機能低下・せん妄、向精神薬の内服、頻尿・夜間排泄行動も転倒・転落リスクとなる。
- 転倒・転落リスクの高い患者への、ベンゾジアゼピン(BZ)系薬剤をはじめとする向精神薬の使用は慎重に行う。
- 入院や転棟による環境の変化、治療による患者の状態の変化時は、転倒・転落が発生する危険が高まることもあるため、病棟間や他部門間、各勤務帯で患者の情報を共有する。
- 転倒・転落リスクが高い患者に対するアセスメントや予防対策は、医師や看護師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、介護福祉士などを含めた多職種で連携して立案・実施できる体制を整備する。
以上8つの提言がありました。
それを踏まえて、自分が重要であると考えていることの一部を簡単に紹介します。
- 転倒・転落リスクアセスメント
一番重要、ADL状況や年齢や様々な因子からアセスメント
転倒・転落リスクアセスメントシートで適宜客観的評価
評価は頻回に繰り返す
- せん妄の予防とマネジメント
適正に、反復するせん妄評価(CAM-ICU/ICDSC/NEECHAM Confusion Scale)
PADIS(痛み・不穏・せん妄・不動・睡眠)の評価と対応
- 環境整備
物品配置や照度
患者に合う靴・装具・衣服の選択
- 頭部への衝撃緩和
ヘッドギア装着
床や壁にクッションやマットの配置
- 意識消失のリスクアセスメント
頭蓋内病変
電解質異常
薬剤
など
これらはあくまで一例です。全部上げたらキリがありません。
患者に合った介入を選択するだけです。
判断やアセスメントに迷ったら、いろんな人や職種にコンサルトしましょう。
ひとまず今日はここまで。
続きはまた今度。
では。
(引用•参考元)
- 一般社団法人 日本医療安全調査機構 医療事故調査支援センター:
https://www.medsafe.or.jp/modules/about/index.php?content_id=14
- 一般社団法人 日本医療安全調査機構 医療事故調査支援センター:医療事故の再発防止に向けた提言第9号入院中に発生した転倒・転落による 頭部外傷に係る死亡事例の分析.
https://www.medsafe.or.jp/uploads/uploads/files/teigen-09.pdf
-
Yamanaka M(2012):Etiology of head injuries due to falls in clinical situations, and nursing care to preventing injuries.ICICIC 6 (11): 2873-2880
- 山中 真,行正 徹(2015):転倒による頭部外傷予防に向けた装着型予防具の予防効果について.日本職業・災害医学会会誌 JJOMT Vol. 63, No. 2,100-108.
http://www.jsomt.jp/journal/pdf/063020100.pdf
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