ただのしがない看護師の世迷言

都内大学病院に勤務している救命看護師が勝手に発します。学んだことのアウトプットや疑問のなげかけ、論文の紹介などしようと思います。もちろん自分の考えや知識が間違っていることもありますし、論文の紹介などは誤訳・意訳もあると思います。著者の原意を損なっていることもあるかもしれないので、鵜呑みにせずに原文を必ず参照し、間違いがある場合はご指摘いただくとありがたいです。なお、抄録内容の著作権については、当然、当該英語論文の著作者に帰属します。どうぞよろしくお願いします。

【論文】看護能力向上による現場(プレホスピタル)での評価・介入が重症外傷性脳損傷患者に与える影響

頭部外傷関連の論文を紹介。

こちらはスウェーデンの論文で概要(PECO)は以下の通りです。

(Patients:対象) 重症外傷性脳損傷の患者に対する

(Exposure:要因) 救急サービスにおける看護能力の向上は、

(Comparison:比較) 看護能力が向上する前と比べて

(Outcome:結果) 院内死亡率・ICU滞在期間は減少するか?

というものです。

 

 

もう少し具体的に詳しく紹介すると、

 

(Patients:対象)

  • 15歳以上ですべてのGCS8点以下TBI(Tramatic Brain Injury:外傷性脳損傷)患者をTBIデータベースから収集→N=651人

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(Exposure:要因)

  • スウェーデンでは2005年に救急車に乗車する人員を変更した。具体的には、基本的な生命維持の知識をもつ救急医療技術者(EMT)×2人から高度な生命維持能力を持つ救急医療技術者(EMT)×1人と登録看護師(RN)×1人へと変更した。この変更は、理論的にはケアや治療の質を高める。つまり2005年以前と以降では能力(この論文では看護能力としている)に差があり、2005年以前<2005年以降という仮定のもと研究を進めている。

 

(Comparison:比較)

  • 看護能力が向上する前(2000~2005年)の群→n=395人

VS

  • 看護能力が向上した後(2006~2009年)の群→n=256人

 

(Outcome:結果)

  • 院内死亡率・ICU滞在期間 

 

(Statistics/Analysis:統計・分析)

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  • 2つの群間で院内死亡率の有意差は示さなかった(p値=0.087)

2000~2005年群:30% vs 2006~2009年群:29%

  • ICU滞在期間は看護能力向上群が有意に少なかった(p値=0.0001)

2000~2005年群:平均11.16日 vs 2006~2009年群:平均8.82日

 

つまり看護能力を高くしても院内死亡率へは影響しなかったが、患者のニーズをよりよく評価でき、結果としてICU滞在期間を短縮することができた。

 

 

個人的解釈としては、ダメなTBIはなにやってもダメ。

しかし現場の評価や介入をしっかりすれば、助かるTBIでは少なくともICU滞在期間は短くできる。

それが良いことかどうかはこれからの課題。

一般的には、ICUにいることでPICSを発症することもあり、社会復帰という視点で考えればICU滞在期間の短縮という結果は、バンザイな結果では?

各々自己研鑽に努めることは、やはり患者に影響する。

みんなでがんばりましょうね。ってこと。

自分ももっと頑張らなくては。

 

ただこの論文においての看護能力とは、異常の早期発見や観察力として捉えられている気がします。看護は奥が深いため、それだけで看護能力が高い低いは括れないと思います。

救急看護師としては、ある程度素直に受け取れるけども。

 

こんな感じでこれからも論文紹介していきます。

お題もらえれば、そのお題に関する論文調べて面白そうな論文紹介します。

 

では、また。

 

 (引用・参考元)

 

 

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